《MUMEI》
おわる、はじまる
心の傷、それは私のアイデンティティーといっても過言ではない。

これまで幾度となく理不尽な、無意味な攻撃を受け、それに耐えた。

はじめはそれらに怒りを覚えていたが、今では何も感じない。

しかし、それはまずい。
何故なら私からネガティブさを取ってしまえば、まるで芥に等しい存在と化すのだから。

さすがの、様々な事に諦めがついている私でも、それと同じになるのは屈辱的。


………だったが、


良かった。

これで全てを諦められる。

そう、一定の呼吸を続けること


生きることも諦められる。


………今現在、私が目にしているのは、一面に広がる灼熱の炎。
そして私以外の、運悪く此処に居合わせた人々の行動は様々。

我武者羅に泣き叫ぶ人、現状が理解できず呆然とする人、助かる術を必死に探す人、家族や友人、愛する者を強く抱きしめる人、
……そして


バラバラ、バラバラ、バラバラと、


落ちてゆく人。



1972年 昭和42年 5月13日

千日デパートにて



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