《MUMEI》
逆間久美。
……え?
ミクちゃんは今何て言った!?
俺が……神名薫じゃないと言ったのか!?
ミクちゃんの洞察力は人並み外れて優れている。
時には読心術でも使ってるんじゃないかと思うほど図星を突いたりもする。
けれど、これは別だ。
雰囲気や言葉使いが変わったといっても、姿形は神名薫そのものなのだから、疑う余地がない。
それでもミクちゃんは尋ねてきた。
《俺人格》になっている神名薫に、『誰?』と。
これではもう……洞察力云々とは全く異なる。
「ミクちゃん……お前……」
「ほら、喋り方もまるで違います。あなたは私の知っている薫くんじゃない」
ミクちゃんの目付きが険しくなる。
なんでこんなことに……!
今思えば、ミクちゃんはいろいろと不自然なことがあった。
2年前だって、誘拐の動機を見抜いてみせた。
いくら洞察力が優れていたって、そんなこと……


『妹さんのためですか?』


待て。
なんで、妹のためだとわかった?
あの時は秋葉原が品川か目黒と話しているところを聞いてしまったのかと思っていたが、秋葉原の動揺が不自然だ。
恐らく、秋葉原は妹の話は一切していない。
にもかかわらず、どんぴしゃりに言い当てたのは、何故だ?
俺は……ある仮定を思い付く。
そんなわけがない。
だが、他に説明ができないのも事実。
それに……『俺』の存在や、響介のあれだって、あり得ないようなことだ。
……ということは、ミクちゃんにもあり得るかもしれない。
確かめなくては、ならない。


「まさか……人の心を直接読めるのか……?」

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