《MUMEI》
質問。
「私は……人の心の中を聞くことが、できる」
俺の質問に答えた。
……肯定した。
ミクちゃんも、特別だった。
この衝撃に、俺は息を飲む。
『僕』が表だったら、卒倒は間違いなかっただろう。
気持ちがざわつく。
まさか……、と思った。
可能性は、高い。
「いつも薫くんの心には、霏や霧がかかったようによく見えないけど……一週間くらい前から、はっきり見えるの」
その原因はわかる。
俺がしばらく『僕』と断絶していたからだ。
心を見抜けると言ったのに、思考は加速していく。
2年前のことも……。
「あなたは……2年前のことを知っている」
予想通りの質問。
ギクリとした。
「私も……少しは知ってる。けど、それは断片的なもので、全てじゃない」
これからの言葉が、想像できた。
やめてほしい。
聞くな。
だが、心の読めるミクちゃんでも、それだけは聞かない。
「2年前のことを、教えてください」

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