《MUMEI》
明かされた過去1
夕季の後を追いかけ、辿り着いたのは屋上。
私は息が上がっているのに、夕季は平気のようだ。
「はぁ・・・はぁっ・・・つ・・・疲れた・・・」
体力には全く自信が無い。
「これくらいで疲れるの?」
「何で・・・疲れないの・・・?」
「知らない。」
何だろう・・・この敗北感。
「走る必要あった?」
「追いつかれたら?」
「あ・・・はい。」
体力でも負け、言葉でも負けるか・・・。
女は言葉の喧嘩は強いって言うけど・・・ダメじゃん。
「・・・」
「・・・」
しばらくの沈黙が辺りを包んだ。先に口を開いたのは夕季だった。
「・・・なぁ」
「うん?」
「昔・・・何かあった?」
「! ・・・まぁ・・・」
「知りたい」
「えっ?」
「あ・・・別に、言いたくなかったら良いけど・・・。気になった」
「気になった?」
「あの日・・・泣いてたから」
あの日、といえば、デビューの日だろう。
話しても良いのかな・・・親にも言ってないのに・・・。
でも、夕季なら話してもいい、そう思えた。
何故かは分からなかったけれど。
「話す」
「ああ」
「あのね―――」
私は過去を一つひとつ思い出しながら話した。
辛かったけど、少し心が軽くなった気がした。
「・・・ということ。」
「そっか・・・。・・・っ!」
次の瞬間、私は夕季の腕の中にいた。
一瞬頭がパニックになって、声が出なかった。
「夕季・・・?」
「あ・・・」
我に返ったのか、夕季はパッと私から離れた。
「慰めるには・・・こうかなって・・・」
「クスッ・・・ふふ・・・そうだね。・・・・・・・・・」
「愛鈴?」
「夕季も、何かあるよね?」
「っ・・・!」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫