《MUMEI》
本気の怒り
「バイバイ・・・」
力なく呟いて教室を出て行った愛鈴を夕季はただ見送るしかできなかった。
夕季の頭に嫌な思い出が浮かんだ。





母の死。





あの光景がフラッシュバックする。
教室を出ようとすると、女子たちに囲まれた。
「夕季様ぁ〜あんなクズほっといて、私たちと遊びましょうよ〜」
「そうですよぉ〜その方が楽しいですよ〜」
「どけ。」
「行かせませんよ〜。」
夕季の肩は震えていた。
入学したばかりのあの光景はもう見れない。
愛鈴のはしゃぐ笑顔、時々見せた柔らかな笑み。
彼女たちは何かに操られているかのようだった。
恐らく・・・花村香代だろう・・・。
あの笑顔を取り戻すために夕季に何が出来るのか。
この・・・気持ちを伝えなければ・・・。
最悪の事態が起こる前に・・・。
「邪魔なんだよ! いい加減にしろ!」
「何で怒ってるんですか?」
「俺は・・・愛鈴を助けないといけないんだ・・・」
「もう死んでんじゃないですかねぇ?」
「あり得るかも〜」
もしかしたら、この気持ちは伝わらないかも知れない・・・。
でも、伝えたい・・・それだけだった。
夕季は、咄嗟に近くにあった机を蹴り飛ばし、女子たちが怯んだ隙に教室を飛び出した。
愛鈴がどこに居るかも分からない。でも、自然と足は屋上へ向かっていた。
階段を駆け上がり、扉を開けたその先には・・・。

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