《MUMEI》
救い
私は・・・いらない・・・。
必要とされていない。
中学と同じ目に遭って、初めて気が付いた。
私がいなくても世の中は成り立つ。
・・・そうだ。私がいなくて「困る人<困らない人」そういうことなのだ。
こんなに早く人生の終わりが来るとは・・・自分でも思ってなかった。
お母さん達に言いたかった。でも、その気になれなかった。
「・・・さようなら・・・」

バンッ

「愛鈴!」
「! 夕季・・・」
そこには、息を切らしている夕季がいた。
夕季には・・・最期だし伝えておこうかな。
「夕季、あのね・・・」
「死ぬな!・・・死ぬなよ・・・」
「夕季!好きなの・・・」
「!愛鈴・・・」
こんな告白・・・切なすぎる・・・。
でも、言えて良かった。言わなかったら、きっと後悔してた。
「いつからか・・・分からない・・・けど、夕季と居ることが私の楽しみになってた」
「・・・」
「それも・・・今日・・・今で終わりだよ・・・。もう耐えられない・・・」
「そんなこと・・・言うな」
「夕季だけが心の“救い”だったの」
「だったら・・・! 俺のところに居ろよ・・・」
「ごめん・・・限界・・・」
私は座っていたフェンスの柵から向こう側の床に立った。
これで・・・終わり。
「夕季! ・・・ありがとう」
「愛鈴!」
私は震える足をゆっくりと前へ出した。
足がギリギリのところで、フェンスにかけていた手を離そうとした。

ガシッ!

「!」
驚きの余り、私の体は何かで宙吊りになってしまった。
恐る恐る上を見ると、私の腕を掴んだのは夕季だった。
「夕季・・・離して?」
もう・・・無理・・・。
「絶対に・・・絶対にこの手は離さない」

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