《MUMEI》 「ふぅ……私は出来る!出来る!」 サヤの独り言は先程と比べて前向きなものに変わった。 が、腰の退け具合は先程よりも悪化している気がする。 「ぐるるるぅぅアァ…?」 雑魚の標的認識ラインに足を踏み入れた様で、明らかに此方を見て唸りを上げた。 「絶対勝てるステータスなのに、どこが怖いんすかねー?」 「明らかなんですけどねぇ。」 サヤの所持精霊であるお調子者サウザーとアイがテンション低めで呟いている。 精霊から見れば、瞬きをする位簡単に見えるのかもしれないな、と少し真面目にサヤの立場を考える。 ……少し、怖いかもしれないな。 そういえば、俺も初めの敵には多少ビビった記憶が無くもない。 しかも、仮にもサヤは女の子だし、多少怖いのは仕様が無いのかもしれない。 「うわっこっち来るっどう見ても豚じゃん!嫌だ帰りたいぃ!」 それにしても、少しビビり過ぎだな。 サヤの姿勢は猫背で、只剣を前に突き出しているだけの体勢だ。 それだけでこいつは倒せるかもしれないが、これからの事を考えると少しだけ泣けてくる。 こいつが近距離タイプじゃないという事は、重々承知している。 だがこれは大切な事なので、相も変わらずにニヤニヤして闘いを見届ける俺だ。 前へ |次へ |
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