《MUMEI》
真っ白
ここ、どこ・・・・・・?

今宵は沈んでいる意識のまま、ぴくっと手に力をいれて動かした。

「今宵!!」

「こー!!」

誰か呼んでる?

でも目が重い・・・・・・。

今宵は呼ばれた声に気がつき、ゆっくりと目を開けた。

「今宵!!大丈夫なの!?」

「よかった・・・・・・」

今宵は虚ろ眼のまま声のする方を向くと、その声の主が目に入る。

「お母さん、歩雪くん・・・・・・」

涙を目尻に浮かべて微笑んでいる加奈子と、安堵した様子の歩雪が立っていた。

「ここ、どこ・・・・・・?」

今宵は最初に思った疑問を口に出す。

加奈子は今宵の額に手を添えながら答えた。

「病院よ。あんたが倒れたってふーくんから連絡があって、救急車で運ばれたの」

「そっか。病院・・・・・・」

そう言われてみると、天井や壁が見慣れない真っ白。

それに、病院独特の消毒液の匂いが鼻につく。

加奈子は真っ白なシーツに涙の水玉模様を作りながら口を開く。

「本当に良かったわ。運ばれてもう3日経ってるのに目を覚まさないから、本当に心配したのよ」

「3日も?」

今宵は運ばれて3日間は意識が無く、ずっと眠りつづけた状態だったのだ。

だからこんなに体がだるいんだ・・・・・・。

頭はさえてきたものの、まだ体が眠っている感じがする。

突然、病室のドアがノックされて看護婦が入って来た。

「雪村さん。先生がお呼びですので、来て頂けますか?」

「あ、はい。じゃあちょっと行ってくるから。ふーくん、よろしくね」

加奈子は看護婦に返事を返し歩雪に声をかけると、病室を出て行った。

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