《MUMEI》

「あーあ、やってらんねえな!!!」

オッサンは独り言にしてはデカ過ぎる声で喚き続けていた

そうこうしてるうちに電車が駅に停車した

オッサンの両隣に座ってた乗客らが降りていった

もしかすると降りるフリをして立ち去っただけかもしれない

オッサンの両隣だけが空席になったけど、誰もそこに座ろうとしなかった

するとその駅で電車に乗ってきた乗客の一人がオッサンの前に立った

その乗客は若い男で、けっこうイカツイ感じのお兄さんだった

オッサン「…」

オッサンはさっきまで喚き散らしていたのに急に静かになった

オッサンの前に立ったお兄さんは、格闘家みたいなガタイで色黒で

金髪でサングラスかけて、腰にチェーンをぶら下げて

黒いTシャツからのぞく腕には茨のタトゥーがあった

オッサンよりも、違う感じでヤバイ雰囲気だった

オッサンとケンカでもしたら、間違いなくこのお兄さんのほうが強いだろう

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