《MUMEI》

お兄さんは電車に乗ったばかりだから、さっきまでオッサンが喚き散らしていたことを知らない

お兄さんは、刺青したオッサンを特に気にとめる様子もなく

オッサンの両隣の席が空いてるのに、吊革につかまって立っていた

「…」

オッサンは黙りこんで、バツが悪るそうに腕組みしていた

さっき目の前に立ったリーマンには怒鳴りつけたのに

同じように自分の前に立ったお兄さんにはビビって何も言えないでいる

一部始終を見てた乗客の白い視線がオッサンに降り注いだ

「ふうう…」

オッサンは時々溜め息みたいな声を出していた

お兄さんと乗客の視線を意識してイライラしてるのが見え見えだった

俺は内心、お兄さんにGood job!! と親指を立てていた笑

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