《MUMEI》 企み腹が立ち家を出た夕季の父、慎人(まさと)は、専属執事、黒宮が運転する車で考えていた。 幼い頃は従順であったのに・・・反抗期というものか。 「旦那様・・・よろしいのでございますか?」 「あぁ・・・チャンスを生かさない者は知らん」 「ですが・・・夕季様もまだ高校生でございます」 そんなこと、慎人にも分かっていた。 ただ、慎人が気に入らないことは、自分の敷いた道に夕季が乗らないことだった。 こうなれば、後継ぎが居なくなることは目に見えている。 焦っていたのだ。 「後継ぎが居なくなれば終わりだ・・・」 「婚約者は誰でもよろしいのでは?」 夕季と黒宮は全く分かっていない。 あの令嬢がどれだけ大切な存在かを。 婚約に感情など要らない。権力なのだ。 先代が作り上げたものをそう簡単に崩せるはずが無かった。 崩したくなかった。 「ちゃんとした身分もない人間と婚約して何になる」 「・・・そうでございますね。後のことを考えなければ」 「そういうことだ」 それを叶えるためには、何をすればいいのか慎人にはもう分かっていた。 夕季の“大切な人”とやらを徹底的に調べ上げ・・・ 潰す。 前へ |次へ |
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