《MUMEI》
計画スタート
小1時間ほど車を走らせると、別荘が見えてきた。
ここでひとまず作戦を練ろう。
「黒宮」
「はい」
「明日から、屋敷の中にいる使用人の誰かに偵察に行ってもらおうと思っている」
「誰か、と言いますと?」
「学校の清掃員に扮してもらうのはどうだ」
清掃員はマスクをするであろうし、顔が隠れて好都合なのだ。
しかし・・・夕季が誰かを愛すなんて今まででは有り得ない話だった。
こういう事態にならないように、夕季の周りにはいつも女の使用人が居た。
「では、片岡はどうでしょう?」
「片岡、か・・・」
「ええ。彼女は一度に複数のことをこなすという能力に長けております。掃除をしながら観察でしたら容易いかと」
「一回連絡してみろ」
「かしこまりました」
きっと・・・いつか、奴の化けの皮を剥いでやろう。
自分が夕季に釣り合わないことを分からせてやろう。
慎人はすでに狂っていた。
狂わせた元凶は誰だ?
奴だ。
「旦那様。片岡が了承しました」
「そうか」
「それと、片岡から聞いたのですが、屋敷の中で、2つに割れたようです」
「2つ?」
「はい。旦那様と夕季様、どちらの味方に着くか、ということです」
「それは構わない」
「片岡は、旦那様に味方する者をこちらに連れてくるそうです」
「それなら生活の不自由はないな。ところで、黒宮は俺に着いてくるよな?」
「はい。一生仕えさせていただきます」
そう言って黒宮は丁寧なお辞儀をした後“失礼します”と言って部屋から出て行った。
とりあえず、片岡の到着を待つ。

煙草をふかしていると、片岡が来た。
「話は聞いております」
「ああ。頼んだぞ」

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